時は昭和23年、東京・銀座。
まだ戦争の傷跡が残る街で、見目葵(けんもくあおい)は戦地へ行ったきりで帰らぬ幼馴染を待っている。
ところが三年ぶりに帰還した郡司鷹彦(ぐんじたかひこ)は、相変わらずのワガママっぷりで葵を苛立たせる――。
著者 | ウノハナ |
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レーベル | KAREN COMICS |
出版社 | 日本文芸社 |
試し読みあり
下記よりネタバレあり。ご注意ください。
全体評価
物語 | |
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絵柄 | |
助平 |
カップリング
カッコつけ屋のろくでなし野郎・郡司鷹彦
幼馴染なのに正妻ポジション・見目葵ネタバレ感想
お話の舞台が戦後なだけあってノスタルジックで、大事なもの(愛)を思い出させてくれるような神作。例えるならこの作品はBLLLLLLってくらい愛が多めです。
『第一幕』戦地から帰ってきた幼馴染にツンデレ攻撃
昭和23年、見目葵(けんもくあおい)は、敗戦した東京・銀座の街でアメリカ進駐軍の通訳として働いています。そんな葵には、郡司鷹彦(ぐんじたかひこ)と言うボンボンで男前な幼馴染がいて、幼い頃からずっと一緒でした。
ところが三年前に徴兵された鷹彦は、戦地に行ったきりで現在も帰ってこズ。毎日鷹彦の帰りを待っていた葵ですが、そろそろ現実を受け止めようとしています。
そんな折、アメリカ兵とキャバレーで飲んでいた葵の目の前にアノ鷹彦が!!しかし昔と変わらず女を連れてヘラヘラと笑い、三年もなんの連絡もしてこなかった鷹彦にブチギレた葵。鷹彦をぶん殴りキャバレーから追い出します。
翌日、葵は幼い頃からの鷹彦との思い出を回想。ワガママで女癖が悪い不良でも、葵にとっちゃ大事な親友で…。なにかあると最後には葵のもとに帰ってくる鷹彦を、やっぱり愛おしいと思う葵なのでした。
そんな鷹彦が今度は葵の長屋(家)の前で待っていて、葵はようやく素直に「帰ってきてくれて嬉しい」と涙。鷹彦の胸ぐらを掴み、顔をうずめます。
『第二幕』出征前の思い出
帰ってきた鷹彦から、今は売り出し中の役者をやっていると聞かされた葵。あとは今連れている女・小百合(さゆり)ちゃんに、役者のマネージャーをしてもらっていると説明されます。
そんな三年前と変わらないひょうきんな笑顔を見せる鷹彦を見て、葵は鷹彦が出征する前のことを回想します――。当時、親から勘当された鷹彦は女たちのヒモ状態、葵のところにもちょいちょい顔を出しては小銭をせびるTheダメンズでした。
でもそんな鷹彦はどんな女より葵を特別扱いしていて「お前だけだ、葵」と言い、葵のもとに戻ってきます。葵も自分が鷹彦の“帰る場所”だということが嬉しくて、待ち続ける日々。
ところがいつものように鷹彦が帰ってきたかと思えば、その手には徴収令状が…!!平静を装う鷹彦は最後に、生まれ育った銀座の街を葵と一緒にランデブーしようと誘います。
けどランデブーが終わり、他の女のところに鷹彦が行ってしまうのが嫌だった葵。「俺が女の代わりになるから行くな」と、鷹彦を引き止めます。鷹彦は「誰が女の代わりになんか抱くか…」と返事をして、葵を布団に押し倒します。
こうして初めてカラダを繋げたあと、鷹彦は出征。葵は鷹彦の無事を祈って待ち続けるのでした――(冒頭に戻る)。
『第三幕』ヒモ男に焦がれ、ジェントルマン男に口説かれる
そして話は昭和23年に戻り、終戦前と同じく鷹彦が葵の長屋に居付くようになります。これじゃヒモ男に戻っただけですが、葵はなんだか嬉しそう。
もう一度、出征前のように鷹彦が抱いてくれるのではないかと期待してるんですね…。でも役者業にも身が入らない鷹彦は、葵に対しても過去の情事を忘れてしまったかのようにスルー。葵は虚しくなります。
そんなとき、仕事先のアメリカ進駐軍に所属するウォルター中尉に口説かれた葵。そうとは気付かずガード緩めでいると、鷹彦が割って入ってきてウォルター中尉をバッチバチにけん制。「俺の葵が~」と言って睨みを利かせます。
『第四幕』ヒモ男が役者になって帰ってきた理由
かっこよくウォルター中尉を追っ払った鷹彦でしたが、肝心の役者業にはちっとも身が入らず。そのことで葵と口論になってプチ家出します。
葵は鷹彦がまた他の女のところに行ったと思い、仕事中ウォルター中尉にめっちゃ口説かれているのに気が付きません(笑)
すると葵の前に現れたのは、鷹彦のマネージャーの小百合ちゃん。役者業に本腰を入れない鷹彦にお灸をすえてもらおうと、葵に相談しに来ました。
そして小百合ちゃんから鷹彦が戦地から帰ってきてから、戦地で負った傷が原因でなかなか東京に帰れなかったことを聴いた葵。負傷した鷹彦がうわ言のように「あおい」という名前を呼んでいたと、小百合ちゃんに教えてもらいます。
この話を聴いたあと、葵の長屋に役者業を本気でやる覚悟ができた鷹彦が帰ってきます。なんだか涙が止まらなくなった葵は、鷹彦に優しくキスされます。
『第五幕』ヒモ男から一人前の男に成長!
役者として一人前になろうと決心した鷹彦は、これで胸を張って葵を口説き落とそうとふんぎりが着きます。そしてキスのあと、葵を布団に押し倒しイチャイチャタイム。
情事後、「生きて戦場から帰れたのは、葵のおかげだ」と話す鷹彦に、「鷹彦の待ってろの一言で生きていた」と返す葵。ラブラブモード全開になったふたりは、長屋での新婚生活をスタートさせます。
そんな幸せな日々が過ぎ、葵は好意を持ってくれているウォルター中尉にやんわりと交際をお断り。紳士的なウォルター中尉は潔く諦めます。
ところが以前葵がウォルター中尉から迫られまくっていたとウワサを聴いた鷹彦は盛大に嫉妬!!過ぎたことにも関わらず(自分がヒモ男だったことにも関わらず)、葵をアバズレ呼ばわりして責め立てます。
『最終幕』銀座のネオンよりキラキラしているものは…?
てなことがあって、今度は葵が長屋から家出。初めて荒々しく感情をぶつけてきた鷹彦に動揺する反面、嫉妬してくれて葵はちょっと嬉しくなります。
そうこう悩みながら歩いていると、恋のキューピット・小百合ちゃんと遭遇。そこで葵は、鷹彦がいかに一生懸命役者業に打ち込んでいるか小百合から聴かされます。
そしたら怒ってたのがスーっと消えた葵。すぐ銀座中を探し回っていた鷹彦に会いに行き再会。ぶっきら棒に反省して謝ってくる鷹彦を許してやります。
その帰り道、葵は銀座のネオンよりもキラキラ輝く鷹彦とランデブー。まるで昔に戻ったような気がして、ずっとこうしていたいと思います。
ところが早く長屋に帰りたい鷹彦、はい、もうお分かりですね。ふたりは幸せな夜の営みにランデブーするのでした。
まとめ
鷹彦って結構クズなんです(笑)不良だし女とっかえひっかえだし。それなのに葵の前だけは、な~んかカッコつけようとして…憎めない男です。ウノハナ先生の表現力の豊かさよ…。
対する葵の正妻感。まるで大奥の正室の如く「最後に帰ってきてくれれば良し」というドッシリ感でした。出来た嫁やでェ。
試し読みあり